安心できる場を作る
AISはいかに良い「場」が作れるか、を常に心がけています。
「場」は、そこにいる人達全員が作り出すものです。茶道に「一座建立(いちざこんりゅう)」という言葉があり、ワークショップにもこの概念があります。一座建立は、茶会に招いた者(亭主)は趣向工夫し最高のおもてなしをし、招かれた客も心を通わせ協力し、結果気持ちのよい一体感が生まれ、茶席がより高い完成度に至る状態を表します。
例えば盛り上がるコンサートのように、準備と練習を重ねた演者と、その場を楽しむ観客全員が一体になっている。より良い成果を出すために、ワークショップの「場」は一体感を持っていることが大切です。
一体感を持つには、安心できる「場」である必要があります。安心できる「場」では、親に見守られながらいきいきと遊ぶ子どものように、安全で、自由で、楽しく、自分を肯定でき、のびのびと行動できます。それにより、さらに質が高く大きな成長が可能となります。
安心できる「場」は、ファシリテーターを含め、対等な立場で集まった参加者がみんなで作ります。人権意識を根底に、差別をせず、参加者同士が人を大切にします。対等であるから、講義のように先生から生徒に伝えるだけではなく、参加者同士による双方向のコミュニケーションが生まれます。全員が参加し、お互いにきちんと伝え、最後まで聞き、質問することで、気づきが生まれる質の高い学びが得られます。
逆に対等ではないとは、出てくる意見が何であっても、「あの人(立場が偉い、声が大きい、専門家、など)」の意見は優れており「この人(素人、一般人、経験が無い人、など)」の意見は劣っているとされる状態です。仮に有名人や識者の意見が優れているから聞く(逆に一般人の意見は劣っている)という場合は、講義が適しています。
安心できる「場」では、たとえ識者や立場が上の人がいたとしても、他の参加者の意見も識者と同じ重みを持った意見として扱います。
またワークショップでは真面目なだけではなく、「面白い」、「楽しい」といった感覚を大事にします。「楽しい」と人間の能力は2倍になり、「苦しい」と能力は半分になるからです(精神科医の樺沢紫苑氏)。面白く楽しい「場」にすることで、能力が上がり、より高い成長、成果が得られます。
良い「場」だったな、と思える様子は、次のような特徴があります。
- ファシリテーターのみならず誰の発言でも、みんなが興味深そうに聞いている。
- 誰もが熱心に話す。納得するうなづきがあり、疑問には質問が出る。
- 「みんな、私の考えたこと聞いて聞いて!」というような熱がある。「何を考えたの?聞きたい聞きたい!」「それじゃあこう考えられる?」とさらなる探究心が出る。
- 笑顔が随所で見られる。
- 楽しくない話題の時には笑顔は見られないが、真剣に考えている顔つきになる。
- 終わった後も、みんなで和気あいあいと雑談する。
- 終わった後でも、長くそのことについて考えている。
- その日に起きたことを誰かに話したくなる。
AISは安心できる「場」を作り、参加者が最も学びを得られる体験を提供しています。
依頼者ファースト
AISは依頼者ファーストです。AISに依頼される方は千差万別。特に学校では、クラスによって、年によって、生徒にふさわしい内容が変わります。今までと同じやり方が通用しないということもままあります。ですので、AISは依頼者とのヒアリングや打ち合わせを大事にし、依頼を受けてからワークショップ当日まで、じっくり時間をかけてプログラムを練り込んでいます。
具体的には、ワークショップの全体の中(1年間のカリキュラムや講座)での位置づけ、参加者の状況、設備、会場、時間などを詳細にお尋ねしています。ヒアリングや打ち合わせをした上でねらいを見つけ、最適なプログラムを作成・提案致します。
例えば、過去には以下のようなご質問・ご依頼がありました。これらには全て可能であると解答し、または最適な形で提案し、満足して頂いています。
- 子供達に世界で大変なことになっていることを教えてもらうことはできますか?
- 外国に興味を持ち、なおかつ日本に来ている外国人の大変な状態をシュミレーションして、相手の気持ちになって行動することを考えるようなことはできますか?
- 全学年をまとめて行ってもらえますか?
- 地域や学校に外国人が増えてきました。先生も生徒も慣れていません。どんなことに気をつけたらいいでしょうか?
- 特定の国と連携をすることになりました。その国々の理解を深めるプログラムはありますか?
- いつもは講演会をしているのですが、あまり生徒の反応が良くありません。何か違うことはできますか?
- 今までやっていたことが、時流に合わなくなりました。何をしたらよいでしょうか?
- 外国のことを何も知らない子達なので何かしてください。
- 生徒の接し方に関して教員研修をしてください。
- 外国の子を連れて行きますのでその子達と日本人の生徒たちとが楽しめる何かをやってください。
- いわゆるESD教育(持続可能な開発のための教育)、SDGs(エスディージーズ)教育に繋がることを年間を通じてやってください。
- コロナ禍で身体的接触があまりできません。身体的接触を控えるようなプログラムはできますか?
- 年間を通して社会貢献活動を生徒にさせたいです。テーマ選びや知識提供、実際の行動までの連続プログラムはありますか?
- 生徒に興味を持たせるプログラムの研修を教員にしてください。
- 話し合いは安心してやれることだよ、と生徒が思えるワークショップをしてください。
参加者ファースト
依頼者と綿密に打ち合わせをしたプログラムですが、当日は参加者ファーストになります。ワークショップの準備や事後は依頼者を優先し、ワークショップ中は参加者の状況を優先する形です。
ワークショップ当日は、ねらい(依頼者の要望)から大きく外れることはありませんが、その場で起きていることを優先し、臨機応変に対応します。例えば、多少の時間のずれや、方法の変更などがあります。これらの変更は、全て参加者がより学びやすいようにするための対応です。ワークショップは音楽のイベントやライブのようなものです。一瞬一瞬を最高のものにするために、ねらいから外れることなく、参加者に合わせて変化させていきます。
なぜ臨機応変に対応できるかといえば、ワークショップは参加者の興味・関心・熱意・戸惑い・拒否感が、表情や意見からダイレクトに伝わってくるからです。
よくワークショップの比較対象として講演(講義)が挙げられますが、どちらが優れているという訳ではありません。両者は主役と伝える方向が違います。
講演は、講演者が主役で、講演者が信じている事柄、言いたい内容や情報を聴衆に伝えます。
ワークショップは、参加者が主役で、参加者が考えた事柄、伝えたい内容をみんなで共有します。
講演は内容を伝えることが主となるため、参加者の反応を知ることが難しいです。都度「今の話を聞いてどう思った?」などとは聞かず、目線や頷く頻度などを確認するだけに留まります。参加者の考えや気付きなどはわからないため、内容の軌道修正は難しくなります。
例えば朝礼で長々と続く校長先生の話がわかりやすいです。大人が聞けば「良いこと言ってるなあ」と感心するのですが、子どもによってはよく分からなかったり、自分とどう関係するかピンと来なくて退屈なだけ、ということがあります。
一方ワークショップは、ファシリテーターが参加者の反応を把握します。事あるごとに声をかけ、参加者の反応を観察し、言葉を引き出すことができます。参加者をノセるため、舞台の役者のように、声色を変える、態度を大きくしたり小さくしたりするなど緩急をつけた働きかけもします。このような相互のコミュニケーションにより、内容の修正も可能となります。
AISは参加者を含めた「場」と密接なコミュニケーションを取り、参加者が最も学べるように尽力しています。
約束を守る(責任を持つ)
AISは社会人として、あるいは団体として、約束を守ります。
約束を守るなんて、当たり前といえば当たり前かもしれません。けれども初めて依頼する方にとっては、相手が本当に依頼通りに物事を進めてくれるか、不安になると思います。
ですからAISは、時間を守る(開始30分前までには現地到着が基本)、ワークショップの穴を開けない(病気などで万が一担当ファシリテーターが行けなくなっても、代わりのファシリテーターが行く)など、個人としても団体としても、できる限り約束を守る、責任を持つようにしています。
実はAISとして活動する20年以上の中では、約束を破られるという経験もありました。
以前あったケースです。国際理解教育では、時には他団体と協力する場合もあります。その時は他団体の方と組んで、AISとワークショップをすることになりました。しかしその方が時間通りに来ない、資料を用意していない、ということで、結局AISがほとんどのプログラムを担当し、なんとか参加者の方にも満足してもらえるワークショップになりました。ちなみにその後、その団体の方が再度依頼されることはなかったようです。
依頼を頂きワークショップをする時間は、参加者にとっては一回きりの大切な時間となります。
加えてワークショップは何回も受けることで効果が増すことから、再度依頼をして欲しいのです。そのためには誠意ある行動が必要だと考えています。
このような理由から、AISは約束を守ることを大事にしています。その結果、お陰様で発足から20年以上、継続してご依頼を頂いています。
人を大切にする
最高のワークショップをする、また依頼者・参加者ファーストでいるために、AIS自身も人を大切にしています。ここでいう人とは、依頼者、参加者、その他の関係する人、AISメンバー、そして自分自身といったあらゆる人を指します。
上から目線ではない
AISでは、経験のあるなしや年齢経歴に関係なく、出てきた意見は等しく大切に扱います。
子供相手でも、子供だから自分より下だと思ったことはありません。もちろん知識の量や人生経験は違うけれども、子どもの意見が、絶対に大人の意見より劣ってるとは限りません。逆に子どもの豊かな発想に驚かされることも多いです。
そもそも相手が自分よりも劣っているというスタンスで接すると、ワークショップは上手くいきません。特に子どもは、相手の人となりを敏感に見抜きます。普段横柄な態度を取っている人が、ワークショップの時だけ「良い人の顔」を被ったとしても、見透かされてしまいます。
下から目線でもない
ファシリテーターは「参加者を守る盾」でもあります。上から目線(ナルシストなど)ではないのと同様に、下から目線(卑下する)ということもなく、フラットな状態でワークショップに臨みます。
自分を欠点も長所もある一人の人間として認めることで、相手に何があっても同様に認められるということに繋がります。
ワークショップには、参加したい人を妨げない、というルールがあります。そのルールを守るために、ファシリテーターは頑張らなくてはいけません。
万が一、他者を傷つけるなど困った行動を取る人がいたとしても、本来であれば言うべきことを言って、全体に対して公平を保ちます。
ファシリテーターには、守る強さが必要なのです。
具体的には、「嫌われてもいいや。ちゃんと役割を全うしよう。好かれるためにやってるんじゃない。参加者が学べるためにやってるんだ。そのためには、時には嫌われるよなって思うことも言ったりやったりするよ」という気持ちでいます。
もし自分が人より劣っている(卑下する)として接すると、学びの水先案内人としての役割が果たせなくなります。
卑下するとは、下に見る、自分に自信がない、という状態です。
「私みたいなものが」とか「私の言うことなんかどうせ」と自分を卑下していると、「空気が悪くなるのが嫌だな」「困った人かもしれないけど、その人にも嫌われたくない、好かれたい」と思うものです。すると、「場」を乱す状態や人に「お願いだから」と懇願するなど上下関係があるような対応をしたり、その人よりの発言や態度を取ってしまいます。
参加者を守ることができない結果、参加者から信頼を得られなくなり、質が高いワークショップにはなりません。
例えば校長会での研修などは、やっぱりビビります。
けれども、事前のご挨拶までは人生経験に敬意を払いますが、ワークショップが始まったら「もうみんな同じ一人の人間です」ということで進めます。
普段から人を尊重する
ワークショップを上手く行うためには、普段から、自分も含めた「人」を尊重し、敬意を持って接することが大切です。普段の気持ちやスタンスが人と接する時に表れ、結果として信頼され、お互いに人を大切にできる関係性が生まれます。
AISでは普段の気持ちやスタンスを作る機会として、会議やワークショップのプログラム作成など、メンバー同士がやり取りする時を活用しています。
例えば、AISはお互いに意見を出し傾聴し、話し合いによる決定をします。
会議でも誰かの意見に対して平気で反対意見を言いますが、尾を引きません。なぜなら「人(人格)」に対して反対したのではなく、物事に対して反対の意見を出しただけだからです。より良い答えを探すことが目的であり、物事を正しく理解し客観的に考えるために、様々な視点から意見を言っているのです。
大事なのは、落とし所、バランスを一生懸命考えることです。まずは、その人がやりたいことを大切にする。その上で、その人だけを大切にするのではなく、みんなそれぞれを大切にする。一見バラバラになりそうだけれど、自分も相手も大切にできる方法は何なのか、を探し続けます。
AISは人を大切にする、尊重するという姿勢を大切にしています。
好きなことをする(改善・成長する)
AISは好きなことをする、好きなことに意識を向けることを大切にしています。これは嫌なこと、面倒なことをしないというわけではありません。集中できる、続けられる、もっと良くしようと工夫する、能力が上がる、その結果改善成長する、といったプラスの効果が多いから、好きなことをするし、好きなことに意識を向けるのです。
最初は「改善・成長することを大切にしている」と書くつもりでした。しかし話し合った結果、「改善や成長するためにイヤイヤやっているのではなくて、好きで色々工夫してたら、結果として改善成長しているんじゃない?」ということに気付きました。
そうです。AISは新しいプログラムを作ることが好きなんです。
好きだから、完成したと思われるプログラムでも、実施の度に改善点を見つけ修正を加えます。
好きだから、社会情勢が変わったならば、状況に合った様式のプログラムを考えて実行します。
好きだから、自由闊達に、新たな挑戦をしています。
そしてこの「好き」の源泉は、ワークショップをしている時・した後の、参加者や依頼者の笑顔や感想。「楽しかった」「面白かった」「勉強になった」「なにかできることをしようと思った」「AISにお願い(依頼)して良かった」というような声を聞くと嬉しくて、参加者が成長する姿を見たくて、社会が少しでも良くなる可能性を感じたくて、私たちはワークショップをやっているのです。
好きなことにフォーカスして、工夫して、結果的に改善し成長し、質の高いワークショップを提供する。このサイクルを、AISは大切にしています。