2022年08月07日 ドレスの裏側 5.参加者のふりかえり

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参加者アンケートにご回答ありがとうございました!
頂戴しました提案や気づいたことは今後にぜひ活かしていきます。

当サイトに提言書・ワークショップをやって感じたこと、考えたことを掲載しました。広く長く多くの方にご覧いただけます。
他の方々からはどんな意見が出たか、ぜひご覧ください。

質問項目

まず、どのような質問項目の内容かを説明します。
次に、各参加者の回答を紹介します。

質問項目
  1. 新たな知見
    新たに知ったこと、気づいたこと(発見したこと)はありましたか?
  2. 心に残ったこと
    心に残ったこと、印象的だったことはありますか?
  3. 具体的に行動を変えるためのプラン
    今回やってみて、行動できる(と思われる)ことは何かありますか?

参加者の回答

教員・40代・女性 テレサ

質問1.新たな知見

衣服の製造・生産から廃棄までに起こりうる(実際に起きている)課題について再認識することができました。また、若い世代の人たちの中でも、ファッションの在り方に疑問を抱き、現状を変えていく必要があるという認識を持っている人がいることが分かりました。

質問2.心に残ったこと

日本における衣服の自給率が0.1%にしか満たないということ。これでは、衣服の製造・生産から廃棄まで起こっている問題が”自分ごと”にならないのも無理ないのかもしれません。土壌汚染や水質汚染、また劣悪な労働環境による健康被害なども地球の遠い場所で起こっているという認識になってしまうのかもしれません。

質問3.具体的に行動を変えるためのプラン

①「衣服」が自分の手に渡ってくるまでのStoryをしっかりと見つめる
②ひとつの「衣服」の一生をできるだけ長いものにする
③タンスの中の整理整頓を心がける (着ない衣服をできるだけ減らす)
④知り得た情報を他の誰かと共有し、ともに解決策を探る

その他・30代・男性 M

質問1.新たな知見

日本の衣服の輸入浸透率は98.2%。1年間で供給される約29億着の衣服のうち、約15億着が売れ残り廃棄されている。服の原材料は石油(ポリエステル)が主流。服の生産工程では奴隷的労働や環境破壊が基本。と新たに知った。
作られる服と使われずに捨てられる服が多いことに無駄を感じる。円安や原油高で輸出入が困難になれば服も手に入らなくなる。服により健康や環境が破壊される。服の生産は搾取の上に成り立っている。この現状は変えなければいけない。と思った。

では、どうやって変えるのかを考えている中で、服のSDGsを考えるなら、ファッション(おしゃれ)という概念・在り方を変える必要があると結論づけた。
具体的には、作られた流行を追うファッションではなく、その人自身をブランド化し、認識してもらうための記号としてファッションを活用する、ということだ。

そこに至る過程を、自分で調べて知ったこと、思ったことを中心に述べていく。

まずファッションの機能面において、説明していく。話の要旨は以下の通り。
1.衣服はそもそも機能のみしかなかった。SDGs的にはOKな時代だ。
2.その後次第にファッションという概念が生まれ、過剰な消費の原動力となった。SDGs的にはマズイ時代。
3.おしゃれは人間本来が求めている欲求であり、無くすことはできない。でもおしゃれはしたいから、SDGs的には困った。
4.だからほどほどのおしゃれを楽しめるラインが必要じゃないか?

【従来の服は機能のみ】
そもそも服を何着も持って毎日洗うというのは、近現代の歴史の浅い習慣だ。

かつて服はとても高価だった。
江戸時代などの農民など、大抵の人は1着持っている程度。
1着の着物を、寒い時期は裏地を着けて綿をいれ、暑い時期は裏地を取って着る。
農作業など動く時はできるだけ着ない。摩擦が服を傷めるからだ。
服に求められたのは、機能性。寒さを防ぐ、擦り傷など怪我を防ぐ、などが満たされれば良い。

服は最後まで使い切っていた。
服が破れたら繕い、すり切れて穴が開いたら当て布をして補い、それもできないくらいボロボロになれば裂いて織り直す(今で言う裂き織り)。裂き織りも無理なら雑巾にし、雑巾にもならなければ、壁の材料やカマドの燃料にする。
洗濯は衣替えのシーズンに行えばいい方。というか洗濯は都市部のお金持ちのおしゃれさんの話で庶民には関係ない。

だから羞恥心の観念も違う。
ボロでもツギハギでも臭くても、特には恥ずかしくなかったらしい。

【ファッションという概念自体が、過剰な消費の原動力】
ところが裕福になった層から、おしゃれの概念が生まれ、服のバリエーションが増える。
季節ごとに服を変え(衣替え)、同じ季節でも数種類の服を着る。
その延長線上に、現代の我々がいる。
まだ着れる服を持っているのに新しい服を買うという、ファッションを追い求める存在が増え始めた。
つまり服の役割が、機能からファッションに変化した。

新しい服は魅力的だ。袖を通せば、テンションが上がる。
しかも買う理由は自発的なもの以外にも、お店や広告を通して無数に用意されている。
値段が安い、かわいい、おしゃれだ、ちょうどいい服がない、最新機能だ、etc。
だから我々は着れる服を持っているのに、また服を買う。そして着ないほとんどの服は、タンスの奥かゴミ捨て場で永眠する。

しかし例えば、一般的に、
・冷蔵庫の中にキャベツがあれば、さらに新しいキャベツを買うことはない。
・文房具のハサミの切れ味が十分にあれば、さらに新しいハサミを買うことはない。

服に関しては、まだ使えるのに、似たような機能を買うという意識と行為が、人口が1.2億なのに、1年間の服の供給量が29億着・廃棄が15億着、という結果に現れている。
1人あたりに換算すると、毎年11~12枚は買うことになる。
私は、この年間12枚という数を普通だと思ってしまった。それだけ感覚的にも麻痺しているのだろう。

ファッションという概念自体が、過剰な消費の原動力だ。
そして膨大な消費に応えるための市場が生まれ、市場を支えるサプライチェーン(原材料の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費まで)が作られていく。

ファッションでは、服を使い切ることはない。
材質も石油(ポリエステル)だと、自然に戻ることもない。
より新しいファッションが求められて作られて、飽きられれば捨てられる。
このように、ファッションを楽しむことが、環境破壊や搾取を生んでいるのだ。

ファッションを追い求めればSDGsは成り立たない。
地球には、80億人にファッションを楽しませるだけの水、土地、廃棄場所等の環境資源は無いからだ。

【おしゃれは人類の本能】
ただし注意したいのが、ファッションというか「おしゃれ」は、人類の本能に近い文化であり、そのこと自体は良いも悪いもないということ。

例えば、
・約7万5000年前の南アフリカの遺跡から、1cmたらずの小さな貝に穴をあけたビーズが見つかった。
・紀元前3000~4000年頃の古代エジプト人のミイラから、爪にネイルアートと思われる着色や、脂肪を利用して作られたヘアージェルが見つかった。
・現代でも、チオピア南部に住む少数民族のスリ族は、自分たちの身体に絵を描き、草花を頭いっぱいに飾り付けをする。

本能ならば、仮に「おしゃれは悪だ!」と否定したところで、おしゃれを無くせはしないだろう。

【まとめ】
現代のファッション(おしゃれ)は、機能面以外の要素が重要となっている。
しかし、ファッションとSDGsは相容れない。それでもファッションを楽しもうとするなら、どんな考え方が必要か。それは3つめの項目で述べる。

質問2.心に残ったこと

ある参加者の体験談から、私も以前、おしゃれを楽しんでいたら、周りに嘲笑されることもあったな、と思い出した。
「何なんその服?かっこつけてんのかよ~笑」と笑われ、悲しい思いをしたものだ。
が、同時にこのことは、ファッション、おしゃれの在り方に対する鍵にも思えた。

ここからは、私が調べた内容と考えを述べていく。

まず、ファッションの心理面について説明する。
ファッションの目的は大きく2つある。一つは仲間外れにならない、もう一つは褒められる、である。
1.同調圧力により、流行に乗るしかない。でもその流行は、企業によって作られている。商業主義に踊らされているだけでは?
2.褒められるためにおしゃれをしている。その姿は良いものだろうか?

次に、人間は見た目で判断するという特徴から起こる事象と弊害を説明する。
3.人は見た目で判断される。演技の一環としてファッションを取り入れるのは良いものだろうか?
4.でも、演じるほどに心を病む。演じ続けるのは危険ではないか?

最後に、どのような対応をとればいいかを説明する。
5.同調圧力に屈するのではなく、承認欲求を満たすのでもなく、自分を偽るのでもないファッションの在り方を模索すべき。

注意点として、ここより後では、外見の優劣についても触れている。しかしこの問題は、ファッション(おしゃれ)を考える上で避けては通れないと考える。
人を外見で差別するのは「ルッキズム」と呼ばれ、近年批判の対象になっている。「一重より二重の方がかわいい」と言っただけで炎上した事例もある。
しかし外見で判断するのは人間の本能だ。本能は無くせない。臭いものに蓋をしても、事実は変わらない。
私だって外見に不自由している側なので、声高に差別だ!と言ってみてもいいが、言ったところで外見の評価は低いままだ。
理想と現実のギャップを埋めることが問題解決だ。現実を直視しなければ、問題解決はできない。
外見の優劣を認めることは、すなわち現実を受け止めることを意味する。

◆◆◆ファッションの心理面◆◆◆
【仲間外れにならない=流行に乗ることが生存戦略】
自分が人とは違う服を気に入って着ていたら、「何なんその服?笑」と揶揄される。これはまさに、同調圧力であるし、人々がファッションを追い求めなければいけない動機にもなる。

Instagramで、TikTokで「流行っているからこの服を着なきゃいけない。」
でも次のシーズンでは、「あの服が流行っているから、去年の服はもうダサくて着れない。新しい服を買わなきゃ。」

似たような例に、iPhoneを持っていたい、というものがある。若い子曰く、iPhoneの最新機種を持っていないとバカにされるから、15万円以上する(PCよりも遥かに価格が高い)iPhoneが欲しい、らしい。
なのでiPhoneは持っている。でもPCは持っていない。

実のところ、トレンド(流行)は企業(お金)によって作られている。
次はこのファッションを流行らせようと、業界全体が動く。それも毎シーズンごとに。

今であれば、有名インフルエンサーを使うなどして「いいね」を金で買い、人気があるように見せかける。
初期の仕掛けが上手くバズれば成功だ。
そして流行に遅れてはいけないと思った多数の人が、ブランドに仕掛けられた服を買っていく。

流行の服に身を包めば、とりあえずバカにされることはない。
高い値段と引き換えに、人は安寧を手に入れる。

だが、考えてみて欲しい。
もしも本当に良いモノであれば、来年だって使えるはず。なのに、そんな服はほとんど存在しない。
ではあの時に”良い”とされていたものは、本当に”良い”ものだったのだろうか?
「おしゃれ」ではなく、「安心・安寧」を買っていただけではないのか?

【褒められる(モテる)と思うからおしゃれする】
同調圧力とは別に、承認欲求が満たされるという観点もある。

自称ファッション好きだという人は、本当にファッションが好きなのだろうか?

機能は同じだがデザイン等が違う服を毎日組み合わせて着る状態を「ファッションが好き」だと定義して考えてみる。

例えば、
・無人島で、誰もおらず、誰にも褒めて貰えず、誰ともミュニケーションが取れない場所にいたとして(衣食住・娯楽等は完璧とする)、それでも毎日違う服を着るだろうか?
・ひきこもりで、外にも出掛けないで家にずっといて、ネットで顔も見せず誰にも会わずに暮らしていて(お金・衣食住等に不安が無いとする)、それでも毎日違う服を着るだろうか?
・見た目が良くない人で、どんな服を着ても絶対に褒められず全ての人にバカにされて(お金・衣食住等に不安が無いとする)、それでも毎日違う服を着るだろうか?

もし誰にも評価されないのに着るというなら、本当に「ファッション」自体が好きだと言える。
けれどもほとんどの人は、毎日違う服を着るというようなファッションを追い求めなくなるだろう。

実際、多くの人が、年を取れば服を買わなくなるというデータがある。
異性との出会い(可能性)が望めなくなったと思った時、人はおしゃれを放棄する。
放棄する度合いは人によるが、少なくとも若者時分に比べれば、さほど気にしなくなる。

あるいは、そもそも人に会わなくなると、服を買わなくなる。
コロナで出歩かなくなった結果、データ集計方法によるが、購買は0.7%~20%減少したという。

つまりファッションは、褒められてこそ。承認欲求を満たすものであり、褒められなければファッションを考えなくなる。

◆◆◆人は見た目で判断される◆◆◆
【自分に有利なようにカテゴライズされるため=見た目がその人の価値だと評価される】
人は見た目、第一印象に強く影響を受けるという側面がある。

例えば、
・同じ医者でも、Tシャツジーパンより、白衣を着ている方が信頼できる。
・眼鏡をかけている方が、かけていないよりも賢く見える。
・まぶたで印象が変わる。一重は「暗い、眠そう」。奥二重は「クール」。二重は「明るい、華やか」。

白衣・眼鏡の有無、まぶたがどうであろうと、その人がどのような人かは本来はわからない。
でも、人は見た目で「どんな人か」を判断される。

実際、
・企業の面接では、一般人でなくモデルの方が採用された、という実験がある。
・SNSでは、美男美女の動画は再生数が伸び、それ以外は本当に面白くないと伸びない。
・婚活市場では、美男美女に人が集まる。その他は声すらかけられない。

他、イケメンとブサイクの特徴を捉えたコピペもある。美女とブスの比較も似たようなものだ。
<イケメンの特徴>
・荷物を持ってくれる
・微妙な変化に気づいて褒めてくれる
・男友達も多くて楽しそう
<ブサイクの特徴>
・荷物を持とうとしてくる
・「前髪切った?」とかどうでもいいことで話しかけてくる
・オタク同士で集まってキモい

見た目によって、大きく評価が変わってしまうことは避けられない。
ルッキズムだと言っても、言葉狩りのようなもので、表面上は無くなったように見えるだけ。
見目麗しいものが優遇されるという事実を変えることはできない。
なぜなら、本能だからだ。

【見た目を含めて”盛る”と評価が上がる】
見た目で判断されるというなら、いかに見た目を良くするか、は重要な要素となる。
必要ならば(年齢の割に)美男美女に見えるように錯覚させることも有効だ。

お芝居などの舞台衣装は、まさに「見た目」で判断する人間の特徴を捉えたコンテンツだ。
漫画やゲームも、顔の輪郭や体型は全て同じなのに、髪の形・色、服の違いで、違う人物だと認識させる作品もある。

となれば、自らを優位に立たせるには、舞台のように演じる方が良いし、舞台衣装のように自分を着飾った方が良い。
結果、相手に、自分の求める人物像だと認識してくれれば、万々歳だ。

そう、おしゃれ(ファッション)を意識するとは、まるで舞台に立つ役者になるような性質を併せ持つ。
役者であれば、役も演じるし、衣装も相応のものを用意する。

服で言えば、ブランド服を身につければ、ブランド服に合った人物にほんの少しだけ近づく。
ただし、服にできるのはその人のカテゴライズやキャラクターの位置づけだけだ。
ブランド服を着たからといって、イケメンや美女に近づくということは無い。この件について、詳しくは後ほど、3つ目の質問項目で述べる。

【演じ続ければ心を病む】
しかし舞台の役者と我々には大きな違いがある。演目に「終わり」があるか、無いかだ。
舞台には終わりがある。でも、我々の演目はいつ終わる?

学校や会社に行った先、知人の前で演じるのは良しとしよう。けれどそれ以外はどうするか?
ただ外を出歩くだけでも、人の目はある。
SNSの中では、自分が特定されている場合もあるし、特定されていない場合もある。

演じる時間が長くなるほど、本当の自分と乖離する。
SNSは自分を盛りやすい(本当の自分よりも良く見せることがしやすい)。
それでか、世界中で、SNSの利用者は、鬱を発症する人が多いと聞く。

【まとめ】
トレンド(流行)は意図的に作られている。
そのトレンドが良いと思うように様々な角度から消費者にメッセージが届けられる。
そして、その作られた流行に乗らなければいけないと思い込まされ、同調圧力となっていく。

褒められたら嬉しい。見た目が良ければ評価が上がる。けれど、自然体では褒められる機会も評価も多くはない。
役者のように演じれば、より評価が上がる。
でも、演じる時間が増えるごとに心は病んでいく。

同調圧力に屈するのではなく、承認欲求を満たすのでもなく、自分を偽るのでもない。
服のSDGsを考えるなら、ファッション(おしゃれ)という概念・在り方を、精神面から変える必要がある。

質問3.具体的に行動を変えるためのプラン

以下は全て、調べた内容からの独自の考察となる。

過剰に服が生産、消費、廃棄される理由は、トレンド(流行)を追う人が多いからだ。
流行を追うのをやめれば、余分な服の消費は無くなり、SDGsに近づくだろう。

さて、ここでは、服に関してSDGsを実現するための方法について、説明していく。話の要旨は以下の通り。

まずSDGsを実現するための方針を説明する。
1.ファッション(アパレル)業界の見込み生産と安い原材料は、環境破壊と搾取の上に成り立っていることを知らせる。
2.SDGsを考えるなら、そもそも消費の量を減らす必要がある。
3.販売時に資源の再生コストを含める。そうすれば、大量生産大量消費は成り立たなくなり、SDGs的にOK。

その次に、消費の量を減らすプランを3つ説明する。
1.原材料を始めとしたサプライチェーンの在り方や、真にかかっているコストを見て、購入を選択する。
2.5年以上使える、本当に良い服を手にする。
3.その人自身をブランド化する。

◆◆◆SDGsを実現するための方針◆◆◆
流行を追わずに、消費の絶対量を減らすことが、SDGsを実現するための方針となる。

【アパレル業界の見込み生産と安い原材料】
従来のアパレル業界では、どれくらい売れるかという見込みに従って生産量を決める「見込み生産」が主流だ。
でも見込み通りにはならず、売れ残りが5割を超えるのは当たり前。6割売れて、売れ残りが4割なら大成功と言われる。
売れ残りの商品はどうするかというと、廃棄される場合もある。叩き売りをしたらブランド価値を下げてしまうからだ。
では叩き売りをせずにそのままの価格で店舗に並べておけば売れるのかというと、全然売れず、不良在庫が売り場(倉庫)を圧迫し、場所代がかかるだけとなる。

服の原価率も考えたい。
販売価格が安価な商品を取り扱う場合は、約15〜20%。
百貨店などに卸す商品の場合で、約25%。
セレクトショップのオリジナルやEC販売メインで、約30%。
低価格店舗で、約40%。
超低価格帯店舗で、約50〜60%。

この安い原価は、環境破壊や搾取に支えられている。搾取については後ほど説明する。
安い服の多くは、化学繊維で作られている。リサイクルはほぼ不可能なため、再利用されずに廃棄処分するしかない。
焼却処分するとCO2が排出される。埋め立てる場合は生分解されないプラスチックゴミとして自然環境を汚染する。
回収されて新しい服に生まれ変わるものは、全体の1%しかない。
消費者が「安さ」を享受するかわりに、地球そのものが大きなコストを背負っている。

ファッション(アパレル)業界の見込み生産と安い原材料は、環境破壊と搾取の上に成り立っていることを多くの人に知らせる必要がある。

【消費の絶対量を減らすべき】
売れ残りは企業にとっても損なので、余剰生産が出ない方法を各社が模索している。
しかしここで見落とされているのは、人々に服を買わせようとする姿勢は変わらないということ。
原材料は化学繊維のまま、経済奴隷の存在も変わらないまま。

仮に廃棄がゼロになっても、消費が変わらないということは、消費者の押し入れの中は、いつでも使わない服でいっぱいのままだ。
消費者は毎シーズンごとに新しい服を買い続けるので、押し入れから溢れ出た服は、やはり捨てるしかない。

SDGsを考えるなら、そもそも消費の量を減らさなければいけない。

【販売時に資源の再生コストを含めるべき】
また、責任区分について、既存のルールにも問題がある。
企業の責任は売るところまでで、売った後の服がどうなるかは、企業の責任ではない。
その服が数回しか着られなくても、廃棄する時に地球を汚しても、それは客の責任でしょ?という理屈だ。

服もそうだし服以外に関してもそうだが、今の企業は、生産時に、資源の再生コストを含めていない。だから安価にモノを作ることができてしまう。

本当は、使った資源は地球に返さなければいけない。
木を切ったら、植林しなければいけない。
プラスチックは、再利用できる形のプラスチックに戻さなければいけない。
金属は、インゴットにして再利用できるようにしないといけない。

もしも資源の再生コストを含めて価格設定をしたら、今売られているモノは、何倍、何百倍、何万倍もの値段になるはずだ。
そうすれば、大量生産大量消費はあり得なくなる。モノに対する姿勢は大きく変わるだろう。

今のままだと、資源が枯渇するのが先か、環境が汚染されて人間が住めなくなるか、どちらが先になるのだろうか。
使った資源はゴミとして捨てず、資源として使える形にしなければ、人類に未来はない。

ここからは、SDGs的な服との付き合い方(消費の量を減らす)の3つのプランを説明する。

1.◆◆◆サプライチェーンの在り方、トゥルーコスト◆◆◆
原材料を始めとしたサプライチェーンの在り方や、真にかかっているコストを見て、購入を選択すると良い。

今日のワークショップで、若者の間ではファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」が人気だと知った。
なのでここでは、「SHEIN」を例に服の裏側について説明する。

【世界的大企業のSHEIN】
「SHEIN」はAmazonのように成功している大企業だ。商品数が多く価格が圧倒的に安い点や、商品のラインナップがすぐに変わる点、SNSで広告を打ち出すマーケティングが世界のZ世代の心を掴み人気が出た。以下に凄さを述べる。

2008年、中国で設立。
2012年、Sheinsideというブランドを立ち上げ、ECサイトで販売を開始。
2014年、ブランド名を「SHEIN」に改める。
2021年、アプリダウンロード数は1.9億回。アマゾン・楽天市場・メルカリ・ZOZOTOWNを抜いてダウンロードランキング1-2位が「SHEIN」。現在は150以上の国と地域で展開。アメリカでは高収入世帯の10代が好きなECサイトで2位に。
この国ではこのブランドをメインとして売る、というような国ごとに異なるブランド展開する戦略を取っている。例えば日本では韓国系ブランドが人気。

「SHEIN」は他社とは違い、実店舗をもたずオンライン通販のみの展開をしているのが特徴。
ほとんどは海外市場のみに進出しており、中国市場でのプレゼンスはほぼゼロに等しい。
生産拠点は中国にあるが、販売先はヨーロッパ、北米、中南米、東南アジアなど世界の主要市場のほぼすべてで、150カ国以上に及ぶ。

【タグにヘルプミー】
この大成功している「SHEIN」の服のタグに、「Help Me: plz」と書かれていた、と聞いた。
調べてみたら、Tik Tokなどでそのタグを確認できた。
劣悪な労働環境なのをなんとかして欲しいと、現場の労働者が購入者に訴えるという図式だ。

つまり搾取の上に、「SHEIN」の成功はある。
「SHEIN」で買い物をするということは、経済奴隷を容認しているのと同じだし、犯罪に加担しているようなものだ。
もっとも、法律を破っていなければ犯罪じゃないよ、という理屈もある。
が、犯罪者の思想である「バレなければやっていい。むしろバレないようにやれ。バレたとしても問題ないと思わせろ」に同調していることは間違いない。

このように「SHEIN」での買い物は悪だ、と聞くと、聞いた人の中では認知的不協和が起きる。
自分の中に矛盾する2つの認知が生じ、不愉快で、居ても立っても居られなくなる。
すると大抵は買い物を続けるため、自らの行為を正当化する。
例えば、「仕方ないじゃん、可愛いし、安いし、便利だし」と、言い訳はいくらでも出てくる。

ちなみに、ここでは「SHEIN」だけを悪者にしているが、環境破壊や搾取は、Amazon、Facebook、Google、その他多くのグローバル企業が、直接的、間接的に行っているため、根が深い。

【知らなければ、問題にもならない】
ちなみに、この凄い企業「SHEIN」を、私を含めた年配の誰もが知らなかった。
つまり、情報が断絶している。世代間の分断が起きている。

若者が求めるものや悩みを年配の人は知らないし、年配の人が求めるものや悩みを若者は知らない。
知らなければ気を配ることもないし、手を取り合うこともない。
庶民が唯一権力に対抗できる力は「数」なのだから、問題を解決するためには、知り合う機会が必要だろう。

【安さを基準に買わない】
では解決策として、「SHEIN」で買わなければいいじゃないか、というと、基本的にはそうなのだが、ここも単純ではない。

例えば児童労働がいけないからと児童労働をやめさせたら、労働より劣悪な環境になったという話がある。
労働ができないから、金を稼ぐために仕方なく、マフィアの構成員、少年兵、臓器売買、売春、などをするようになったという。

「SHEIN」が特別酷いなら、「SHEIN」を不買すればいいし、糾弾すればいい。
でも業界の構造だとしたら、「SHEIN」の代わりに、よりアンダーグラウンドな組織が出来上がるだけかもしれない。

少なくとも、「安くて良いもの」という商品は、構造上、作ることはできない。
安いものには理由がある。
実は粗悪品(良いものだと錯覚させる)か、搾取の上に成り立つか、その両方かだ。
だから世界中の人が「安い物を追い求める」という姿勢でいる限り、嘘は蔓延るし、搾取も無くならないだろう。

安さではなく、原材料がどのようなものか、どのように消費者まで届くのか、その裏側までしっかりと見て、SDGsに配慮した商品を選ぶこと。
SDGs的な商品はどれも価格が高くなるから、多くは買えない。
消費そのものが減るので、SDGsの達成にも貢献できる。

2.◆◆◆本当に良い服を手に入れる◆◆◆
本当に良い服は高い。
原材料をオーガニックコットンにしただけでも高いし、原材料から縫製まで全部がSDGsに配慮している商品など、とてもではないけれど、何枚も買えない。
もうこの時点で、流行には乗れない。
が、同時に、至高の一着を手に入れるという考えになれるかもしれない。

そこで良い選択肢として、オーダーメイドがある。
参加者の中に、オーダーメイドが良いと言っている人がいたが、まさにそうだと思う。

そもそも人間の体は、顔以外にも、腕、足、肩幅など、すべての長さが左右均一ではない。微妙に違っている。
既製品の場合はそのような左右のズレには対応できないので、既製服を着る全ての人が、自分の体にフィットしない服を着ている、とも言える。
服は長時間着るものだから、当然、微妙な服のズレも長時間伸し掛かり、疲れとして現れる。

また、安い既製服のほとんどの原材料は、石油(ポリエステル)だ。
ポリエステルは人体に有害だ。経皮毒として体に吸収されるし、静電気を帯びて体の電気の流れを狂わせる。
アトピーになったり自律神経の乱れに繋がるので、着てはいけない。

体へのフィット、人体への有害性を考えると、オーダーメイドという選択肢は、十分視野に入ってくる。
例えば、オーダーメイドスーツを着ると、体が楽になるという話も聞く。
オーダーメイドなら、原材料から縫製の在り方まで、全ての選択を選びやすいはずだ。

5年以上は使える至高の一着を手に入れれば、その服を着る人の価値も高まることだろう。

3.◆◆◆その人自身をブランド化する◆◆◆
【ファッションは顔が最重要】
人から良い評価を得るためのファッションは、実は顔の占める割合がとても大きい。服じゃなくて、顔が大事だ。
この服を着たら格好良くなれる、可愛くなれる。あのモデルみたいになれる。素敵に見えるようになる…。
服を着たら見た目が良くなるというファンタジーは、全て企業が作り上げた幻想だった。

私がこの事実を知った時、様々な感情が渦巻いた。

受け入れるのに、とても時間がかかった。認めることが苦痛だった。
世間一般で言われていることと全然違うじゃないかと憤りを感じた。理不尽さも感じた。
もっと早く言ってくれ、教えてくれ。そうすれば他のことに時間とお金を使ったのに、とも思った。

そして最終的に、私はファッションの流行を追うのをやめた。

流行を追うのをやめたきっかけとなった写真がある。
以下のサイトの画像を見て欲しい。
簡単に説明すると、ファッションと体型は同じで、首から上だけを取り替えるとどう見えるか、という内容が中心となっている。
もしかしたら、私と同じように絶望する(不快に思う)人もいるだろう。しかし、避けては通れない事実だ。

ファッションは顔が全てということが分かる8枚の画像
http://netgeek.biz/archives/84388

やっと気づいた!オタクのファッションがダサいんじゃなくて、ダサいのがオタクなんだ!
http://netgeek.biz/archives/85421

話が違うじゃないか!ネット通販で買った服の理想と現実を比較した画像
https://karapaia.com/archives/52179666.html

「可愛い服、カッコいい服を着たらモテる(評価が上がる)に違いない」と思う人は多いだろう。
雑誌にも、「メンズに聞いた〝最強モテコーデ〟大特集♡絶対モテるコーデ16選&ヘアメイク術」なんてある。
だが、そんなモテ服は存在しないということが、上記サイトの画像を見たなら納得するはずだ。

つまり、服を着たからといってさほど本人の評価は変わらない。
変えるなら、顔だ。
この事実を知っているからなのか、韓国では整形が大流行している。
髪を整え、眉毛を整え、コンタクトをし、二重にし、必要なら整形する。

もっとも、整形は落とし穴だ。
大抵の場合、整形した箇所の細胞が弱り、そこから整形をしない場合に比べ、老化・癌化などが早まり、ろくなことにならない。
コンタクトも二重も、人間が最も大切とする眼の機能低下を加速させるので駄目だ。

重要なのは、与えられた手札で勝負するしかない、という事実に気付くこと。
自らを受け入れ、自分を愛し、胸を張っていることだ。
人生の主役は服じゃない、あなた自身なのだから。

【ミニマリストに学ぶ】
服を買わないならどうするんだというお手本として、ミニマリストがいる。
有名人では、北川景子。彼女は服を10着しか持たないという。
他、話題の書籍に「フランス人は10着しか服を持たない」もある。

ミニマリストの中には、洗濯が乾かないことを想定し、服の着回しとして正副予備の3セットを最低限持つ、という人がいる。
・外夏  -白シャツ 3
・外冬  -白シャツ 3
・中冬  -スウェット2
・外夏冬 -ズボン  2
・寝夏  -ズボン  1
・寝冬  -ズボン  1
・外中夏冬-Tシャツ  3
・外中夏冬-パンツ  3
・外中夏冬-靴下   3
・外冬  -コート  1

やりようによっては、これだけの枚数で暮らすことは可能だ。

【自分のスタイルを確立する】
誰かに作られた流行を追うのではなく、集団圧力に合わせるのでもない。
自分という個性を演出する、位置づけるために服を活用することが、ファッションの良い在り方だと考える。
つまり自らをブランド化する、ということだ。

ブランドとは、他と区別するための概念だ。
服のブランドを作る、というわけではない。その人なりの個性、生き様を含めたスタイル、などを含めたその人独自のブランドを作る、という意味になる。
「この人ってこういうキャラだよね」、とファッションを見ただけで個性を理解してもらえたら、その人はブランド化できていると言っていいだろう。

自分のスタイルを持っている人は魅力的だ。

スティーブ・ジョブズは、会社のトップだけど、Tシャツジーパンというスタイルを確立した。
きゃりーぱみゅぱみゅは、世界のアーティストとして、原宿ロリータ系というスタイルを確立した。

流行に乗るのではなく、自分の世界観を確立し、キャラクター(個性)として認識してもらう。
そう考えれば、ゲームや漫画のキャラクターが毎回同じ衣装をしているように、同じ服を着るというのも、個性を際立たせるのに役立つかもしれない。

有名なインフルエンサーを見て、この服素敵、と人は思う。
でも実際は、その服を見ていたのではなく、そのインフルエンサーを見て、良いと思ったのだ。

我々も同じだ。服を見られているんじゃない、私が見られているのだし、私自身を見てもらいたいと思うものだ。

【人間関係は、深く狭く】
確かに初対面では、外見がほとんどの要素を決める。
しかし同じ人と長く付き合っていく時、外見の重要性は下がり、内面が重視されるようになる。

SNSは初対面ばかり。特にTikTokなど動画では、見た目を重視せざるを得ない。
けれど、本来人類は、群れの各構成員を認識できる範囲の人数が50人程度までだという。
ということは、50人の大切な人と一緒に生きていくことが大事だと考えれば、その人達に受け入れられるような服装であれば良いと言える。

人間関係は、広く浅くではなく、狭く深く。そうすれば、ファッションに追われずにすむ。
良く見せるためではなく、自分のためのファッションができるようになる。

【まとめ】
服のSDGsを考えるなら、ファッション(おしゃれ)という概念・在り方を、機能面・精神面において変える必要がある。
具体的には、作られた流行を追うファッションではなく、その人自身をブランド化し、認識してもらうための記号としてファッションを活用する、ということだ。

おしゃれをするほど、どうしてもSDGsからは遠ざかる。
けれど、シーズンごとに移り変わる流行を追わないだけでも、SDGsに貢献することになる。
その上で、服の消費量を減らしながら、なおかつ自分らしさを表現できるファッションを目指せると良いと思う。

【最後に】
私自身、服を100着以上買ってきたし、ファッションに没頭した時期もあった。
だからこそ、過去の私に言ってあげたい。
ファッションでどうこうはできないよ。もっと筋トレして、トーク力を磨きなさい、と。

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